森岡正博「感じない男」


感じない男 (ちくま新書)

感じない男 (ちくま新書)


 何について書こうか迷ったあげく、本を読むのが好きなので、「読書」のカテゴリーを設け、最近読み終えた本について書くことにした。


「感じない男」は、大阪府立大学教授の森岡正博が、〝男の不感症〟について論じた本である。
 本書の書き出しはこうだ。

この本では、「男は感じていないんじゃないか」ということを書いていく。感じてないから、ミニスカートだの、制服だの、ロリコンだの、レイプだのといった妄想にふりまわされることになるのだ。

 森岡は、不感症の男を「感じない男」と呼び、自分自身もその一人だと告白する。そして、この「感じない男」が、制服やロリコンやレイプといった性的妄想にふりまわされるのだという。
 学者がこうした論を展開する場合、自分のことを棚に上げてしまいがちだが、森岡は自分自身のセクシュアリティ(性についての感じ方)を隠すことなく語っている。自分がミニスカに欲情するとか、制服を着た少女にゾクゾクするとかいったことを赤裸々に打ち明けているのだ。
 森岡は、「自分のセクシュアリティの探求には、大きな痛みと恥ずかしさがともなう」と書いているが、私も、森岡の文章から、自己のセクシュアリティに向き合うことの痛さを感じた。そうした痛みを伴いながら書かれた本書は、だからこそ机上の空論に堕さないリアリティや説得力、迫力がみなぎっている。
 しかし、私自身は、自分のセクシュアリティをこういう場で打ち明ける勇気はない。それでも少しだけ言えば、森岡がミニスカートに欲情する気持ちは理解できるし、どうしてミニスカに欲情してしまうかという分析には「なるほど」とうなずけた。