貫井徳郎「さよならの代わりに」

さよならの代わりに

さよならの代わりに

 劇団員・白井和希がたまたま出会った萩村祐里と名乗る少女は、自分は未来からやってきたと言い張る。どうやら冗談ではなさそうだ。はたして萩村祐里は、本当に未来からやってきたのか、それとも自分が未来からやってきたと信じているだけの頭がおかしい人物なのか。
 彼女が本当に未来からきたのなら本作は時間SFの様相を呈してきそうだし、頭のおかしい人物ならサイコパスものになっていく可能性も秘めている。彼女の正体の謎に引かれて文章をぐんぐん読み進めたくなる。
 ラスト、ばらばらになっていたパズルのピースが論理的に埋まっていく快感を味わえる。