法月綸太郎「密閉教室」

密閉教室 (講談社文庫)

密閉教室 (講談社文庫)


 『密閉教室』は、法月綸太郎のデビュー作。彼が23歳のとき、1988年に刊行された作品である。『生首に聞いてみろ』で法月作品に初めて触れた流れで、彼のデビュー作から読んでみようと思ったのだ。
 高校を舞台にした本格推理小説で、探偵役も被害者もその高校の生徒。それなりに論理的だがいかにも若々しい文体に、私はなかなか乗り切れず、物語世界を十分に堪能することができなかった。ひとりひとりの登場人物にリアリティを感じられず、感情移入もできず、やたらと多い小見出しも気になって、ページ数のわりに読み終えるのに時間がかかった。途中で挫折しそうにもなった。
 だが、ラストで明かされる真相には十分驚愕させられた。犯行のトリックや犯人が誰か判明した驚きより、最後の最後、探偵役の少年が置かれた立場が衝撃的だ。