福満しげゆき「僕の小規模な失敗」

僕の小規模な失敗

僕の小規模な失敗


 福満しげゆき。最近まで名前すら知らなかったマンガ家だ。マンガ本などの陳列に結構こだわりを見せているA書店で平積みになっていて、「このままじゃダメになる… すべてがダメになる大いなる予感!」「これぞアックス版まんが道」という帯のフレーズに惹かれて本書を購入した。


 一読して、心の底からつらくなった。このマンガの出来が悪いとか、話がつまらないとか、そういう次元のつらさではなく、主人公の青年の心理や行動にあまりに共感できてしまうがために、つらくなってしまったのだ。
 10代後半から20代前半、太宰治の『人間失格』や、山田花子のマンガなどに強く共感しハマっていた私の心情が、この『僕の小規模な失敗』でリアリティたっぷりに描かれているような気がした。とっくに30歳を越した私は、外面的には思春期特有のコンプレックスや自己卑下、自己否定、無根拠な不安といったマイナスの精神状態から遠ざかったかのような日々を送っている。しかし、その内面には、いぜんとしてそうしたマイナスの精神がしつこく根差していて、だからこそ本作の主人公が感じたり行なったりする事柄に、いちいち、自分のことが描かれているような感覚を呼び起こされる。


 この作品は、福満しげゆきの自伝的な要素が強い。というか、ほぼ完全に実体験を描いていて、フィクションの要素はほんどなさそうだ。そういう福満に、私は自分の性格を重ね合わさずにはいられない。彼のほかの単行本も読んでみたくなった。