矢沢あい「NANA」

NANA―ナナ― 13 (りぼんマスコットコミックス)

NANA―ナナ― 13 (りぼんマスコットコミックス)

 2人のNANAが織りなす恋と友情の物語。読者の共感を誘う心理描写が非常に巧みで、ついつい感情移入しながら読んでしまうし、話の続きが気になって仕方なくなる。気がついてみれば、NANAワールドに浸かっている自分がいた。


 各話の最後で語られる独白のようなナレーションが2人のNANAの悲痛な未来を暗示していて、現時点で2人がどんなに幸福になっていても、やがてこの幸福が崩壊に向かうのでは、という予感が常につきまとう。シンデレラ・ストーリーやサクセス・ストーリーの構造も含んでいるが、そういうストーリーがたいてい迎えるハッピーエンドの方程式が、この作品では成立しないような気がする。
 まったく安心できないのだ。その安心のできなさ加減が、物語を次へ次へと読み進めたくなる原動力になっている。


 2人のNANAのあいだに見え隠れする、女性どうしの恋愛感情にも似た名状しがたい感情が、この作品の中で繊細かつ激しく脈打っていて、2人の関係から目が離せない。ラストシーンまで必ず見届けたい作品だ。


 今夏に発売された最新13巻では、ある登場人物のリストカットシーンが印象に残った。