東野圭吾「片想い」

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)


 東野圭吾のミステリーは、重いものから軽めのものまで多種多様で、どの作品も水準以上の質を保っていて、とても器用な作家だと思うが、個人的には彼の作品になかなか熱狂できない。「うまい」「おもしろい」とは感じるのだが、それ以上私の心のコアな部分に届いてくるものがないのである。


 それでも、東野作品には大ハズレがないため、安心して読むことができる。
『片想い』もいい作品だった。大学時代、アメリカンフットボール部で青春をすごした面々の10年後の物語。性同一性障害ジェンダーの問題を扱っている。そういう問題に新しい視点や見識を与えられたような気がする。
 登場人物の性格的な役割を、アメフトのポジションになぞらえて描写するところは、アメフトに馴染みのない私にはいまいちピンとこなかった。