サイモン・ウェルズ監督「タイムマシン」

タイムマシン 特別版 [DVD]

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 舞台は1890年代のニューヨーク。『LAコンフィデンシャル』『メメント』のガイ・ピアースが演ずる大学教授・アレクサンダーは、ある日、婚約者・エマを強盗に殺され、過去に遡ってエマの命を助けるため、変人扱いされながらもタイムマシンを発明。さっそくエマが殺された日に戻って彼女の運命を変えようとするが、エマは別の理由で結局死んでしまう。どうして過去を変えることができないのか疑問を感じたアレクサンダーは、疑問を解き明かす答えが未来にあると考え、タイムマシンで未来の世界へ旅立つのだった。


 監督のサイモン・ウェルズは、原作者・H・G・ウェルズの曾孫にあたるという。撮影の終盤、ウェルズ監督が体調を壊し、代わりに『メキシカン』のゴア・ヴァービンスキーが監督代行を務めた。
 そんな本作は2002年公開の映画だが、これは1960年に日本公開された『タイム・マシン』(監督:ジョージ・パル)のリバイバル作品といえよう。前作のほうが評判がよい印象だが、私は前作を観ていないので比べようがない。少なくとも特撮の技術については本作のほうが格段に向上しているだろうから、ストーリー的に前作が上でも、私は本作のほうを観たくなる。私がこういう映画を観る最大の目的は、お金のかかった特撮映像なのだ。
 その点本作は優れたCG技術で、タイムマシンや未来の風景を見事に表現していて、それだけでとりあえず満足できる。とくに80万年後の人類が断崖絶壁に造った住居の映像は最高。タイムマシンが未来へ進むにつれ、時代時代の風景がめまぐるしく変化するのも見応えがあった。


 ストーリー的には、前半が恋の物語で、それが後半でいつのまにか秘境冒険ものに変貌する。前後半でちょっと分裂している感は否めない。
 恋の物語にタイムパラドックスのからくりを絡めた前半のテーマを貫けば、そのほうが名作になったような気もするが、後半の冒険部分も私はハラハラできて嫌いではない。単純に娯楽映画として観るなら、合格点をあげられる作品だった。



 2003年公開の『ドラゴンヘッド』(監督:飯田譲治)も観た。

ドラゴンヘッド [DVD]

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 邦画にしてはCGやセットが大がかりだった。そして本作の見どころは、そうしたCGやセットばかりで、ストーリーやテーマ、俳優の演技などにみるべきものはなかった。望月峯太郎の原作がマンガ史に残る傑作だと思うだけに、映画の矮小さは残念だ。原作のあの、恐ろしいほどの描写力と、引きの強さは絶品だ。
 原作は、主人公の絶望と希望に深く感情移入できるし。


 冒頭のトンネル内のシーンは入念につくりこまれていて長々と映されたが、地上に出てからは実に端折った展開。トンネル内の新幹線を中心としたセットと、ラストのCG映像はなかなかよかったので、観て損した、というほどではなかった。