折原一「倒錯の帰結」

倒錯の帰結 (講談社文庫)

倒錯の帰結 (講談社文庫)


 本書は、『倒錯のロンド』『倒錯の死角(アングル)』と続いた「倒錯」シリーズの完結編。『首吊り島』と『監禁者』の2つの物語で構成されており、『首吊り島』は普通に本の前から読み始めればいいが、『監禁者』は、本の後ろから天地を逆にして読まねばならない。そして、2つの物語の間には、袋とじページが挟みこまれている。つまり、前から始まった『首吊り島』と後ろから始まった『監禁者』のお互いの最後尾が出会うはずの地点に袋とじが存在しているのだ。横溝正史ばりの『首吊り島』と、スティーヴン・キングの『ミザリー』を思わせる『監禁者』が、それぞれ本の中央に向かって話を進めていき、どちらもとりあえずトリックが解明されたところで袋とじを開けて読み出してみると、それが2つの作品の本当の完結編となっていて、さらなるどんでん返しが待ち受けている、という趣向である。


『首吊り島』を絶海の孤島を舞台にした密室ミステリーとして、『監禁者』を著者お得意の叙述ミステリーとして満喫したあと袋とじ部分を読むと、互いの作品がメビウスの輪のように不思議なつながりを示し、読んでいる私の頭をくらくらさせた。
 ただし、凝った趣向のわりに、折原の他の叙述トリック作品と比べて特別な驚きを感じうるものではなかったし、謎が明らかになったときの腑に落ちる感じも特別に強くはなかった。