桑田乃梨子「豪放ライラック」1巻(現在3巻まで刊行)

豪放ライラック(1) (GUM COMICS)

豪放ライラック(1) (GUM COMICS)


 高岡りらは、強度のブラザー・コンプレックス。将来は、兄と本気で結婚するつもりでいた。だが、兄が別の女と結婚すると知らされ、即座に兄離れを決意。寮のある女子高へ進学し、兄がそばにいない生活を送ることにしたのだった。
 ところが、徹底的に兄に甘やかされて育ったりらは、根っからの甘え体質を抱えた女の子だった。兄から離れたら離れたで、今度は、女子寮で知り合った友人や先輩に甘えまくることになる。


 りらは何をやっても不器用で失敗ばかりのダメっ娘だが、そういう自分を顧みてうじうじ悩むようなことはない。ひたすら前向きで明るくて、周囲の人々を自分のペースに巻きこみ翻弄するパワーを持っている。
 りらを取り巻く友人たちも、それぞれに個性的で、彼女らの人間関係を主体に話が展開されていく。群像劇を得意とする桑田乃梨子らしい作品世界だ。


 桑田乃梨子は、掲載誌の「月刊コミックガム」編集部から「女子寮の話はどうですか?」と持ちかけられ、この作品の舞台を女子寮に設定したという。さらに掲載誌の傾向を意識して、〝妹萌え〟の要素を取り入れたようだが、桑田の絵柄と作風では萌え系になりうるはずもなく、桑田らしさが存分にあふれた世界が繰り広げられるばかりである。〝萌え〟度は低いが、高岡りらのかわいらしさとダメさ加減に、理想の妹像を見出す読者もいるのではないか。