京極夏彦「鉄鼠の檻」

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)

京極堂が憑き物落としをして事件を解決していく「妖怪」シリーズ第4弾。このシリーズは2003年に出た『陰摩羅鬼の瑕』が最新刊で、私もそこまで読んでいるのだが、次回作までの間が空くと「妖怪」シリーズが恋しくなるので、そういうときはこうして過去の作品を読み返して気持ちを紛らわせているのだ。


 長大な分量の小説だが、一度読んだことがあるのにもう一度読み返したくなるくらい、その長さが苦痛にならない。むしろ、作品世界にどっぷりと浸からせてくれるその長大さが心地よいくらいだ。京極の作風が苦手な人は、「弁当箱」と比喩されるこの本のとてつもない厚さを見ただけでげんなりするだろうが…。


 本作は「禅」にまつわる知識が頻出し、とくに禅の歴史や宗派について大ざっぱに知ることができる。しかし、禅の歴史や宗派などの知識をいくら知りえても、禅の本質、禅の何たるかは、言葉では伝えられないという。禅の何たるかをつかんだと思って言葉で表現した瞬間、その言葉は真実から遠ざかってしまうというのだ。禅というのは、科学や論理では解明できないものであり、修行によって、坐禅を組むことによって体得するものであるらしい。