ピーター・ジャクソン「キング・コング」


ロード・オブ・ザ・リング』で名声を上げたピーター・ジャクソン監督が、オリジナルの『キング・コング』へオマージュを捧げまくった、上映時間3時間8分にも及ぶ超大作。人間に襲いかかるクリーチャーが続々登場する秘境アドベンチャーの醍醐味がたっぷり。深みのある人間ドラマやご都合主義でないリアルなストーリーを求めなければ、最高度の満足感を得られる。お金を目一杯かけたCGやセットの迫力だけでも、劇場で観た甲斐があった。
 精巧なCGによって、あたかも本物の恐竜が動いているような映像を観たときのショッキングな感動は、スピルバーグの『ジュラシック・パーク』で初めて味わったわけだが、そういう映像にもある程度慣れてきた今となっては、さすがにあのときほどの衝撃はない。それでも『キング・コング』のCG映像には、目を見張るものがあったといえる。


 本作は、おおまかに3つのシークエンスで構成されている。


1.プロローグ〜船上
2.骸骨島
3.ニューヨーク


 1のシークエンスは、船上のロマンスがあったり、船のそばをイルカが泳いだり、船が沈没しそうになったり、『タイタニック』の縮小版を観ているような感覚だった。このシークエンスが思いのほか長く、髑髏島やコングの出現をさんざんじらされた感はあるが、登場人物ひとりひとりの性格や背景、その人間関係をじっくり描くための時間と考えれば得心が行く。アクションにつぐアクションという忙しい状況へ突入する前に人間を描く時間をそこそことれたことが、作品の厚みにつながった面もあろう。
 

 2では、コングをはじめとした巨大クリーチャーのCG映像を純粋に楽めた。コングの表情や動きにリアリティがあってイイ。ティラノサウルス風の恐竜3頭とコングが戦うシーンは圧巻。圧巻すぎて、時々笑いすらこぼれてきた。ヒルのような軟体動物や、虫系の動物が襲撃してくるシーンはグロテスク。とはいえ、いちばん不気味で怖かったのは、髑髏島の原住民の外見と行動で、数々の巨大クリーチャーについては、よくできたCG映像に見惚れた、という感じだ。


 3は、1933年のニューヨークの風景をCGで緻密に再現していて見応えがあった。2のシークエンスでコングがヒロインのアンを助けるため恐竜と戦ったあたりからコングに感情移入していたので、ラストは少し泣けた。コングがアンを担いで氷上を滑ったりして遊ぶシーンも、コングヘの感情移入を促した。