福満しげゆき「生活」
- 作者: 福満しげゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: コミック
- 購入: 2人 クリック: 723回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
自己を投影したエッセイ的なマンガで人気の福満しげゆきが描いた長編のフィクション。
鬱屈した日々を送る男と男がたまたま出会い、その鬱屈晴らしと正義感の満足のため、ある活動を始める。
その活動は、悪いことをやった人間を見つけ、つかまえ、制裁をくわえることだった。
それは、正義の行動といえば正義の行動だが、単なる憂さ晴らしといえば憂さ晴らしであり、いくら正義の名のもとに行なったものであっても非合法の行為だった。
個人的な動機で始めた活動だったが、仲間が増えていき、そのうち活動が組織化し、オリジナルのメンバーの力の及ばぬ規模に達していく。
そんな話であった。
正義の行為と個人的な憂さ晴らしが紙一重の次元にあること。
個人が始めた活動が、組織化されていくことで個人を疎外していくこと。
そんな様態が福満テイストで描かれていた。
鬱屈を抱えたまま登場人物たちは戦う。
そのさまは、かっこよくもあり、かっこ悪くもあった。かっこ悪いのにかっこいい、というべきか。
仲間を必ず救いに来るという約束を果たすくだりは太宰治の『走れメロス』的だ。