手塚眞さんの講演会へ
3月31日(土)、浜松科学館で手塚眞さんの講演会「アトムは本当に生まれるのか」を聴講しました。
アトムというキャラクターの稀有な特徴、『鉄腕アトム』の連載が始まるまでの経緯、『鉄腕アトム』に登場するさまざまなロボットなどの話があり、それからアトムの7つの威力を検証しつつアトム実現に関する見解が語られました。
7つの威力のうちかなりがすでに実現しているか実現可能なところまで行っているけれど、心・感情・感受性の問題があるし、あんな小さな身体に10万馬力を持たせることはまだ難しい、との見解でした。
そして、アトムの各機能に関する技術は別々の科学者がそれぞれに研究しているので、それをまとめて目的に向かわせられるような強力なプロデューサー的存在の科学者がいないとアトムの実現は難しい、とのことでした。
科学的な観点とは別に、アトムが手塚治虫という一人の人間から生み出されたことに着目してほしい、とも語られました。「手塚治虫は天才、まさに天才なのですが、一人の人間です。アトムは一人の人間の頭の中から生まれてきたのです。今はスマホなどが普及して自分の頭で考える前にスマホに頼ってしまいがちですが、いったんスマホを置いて、自分の頭の中で想像し考えることが大切なのです」といった意味のことを、力を込めて述べられたのです。そういうところから、第2第3のアトムのアイデアが生まれてくるのではないかと。
眞さんの講演を聴いて、『鉄腕アトム』で描かれたロボットの先駆性と多彩さにあらためて驚嘆しました。ヒト型から乗り物型に変型するロボット、複数が合体して一つの姿になるロボット、自分らで増えて進化して生物のようになったロボット、女優をするロボット…などなど。のちに何らかの形で実現したり、フィクションで活躍したりしたロボットアイデアの宝庫です。
講演会の終盤は質疑応答の時間になりました。「手塚治虫さんはどんな父親でしたか?」との質問に、眞さんは「ひとことで言えば『やさしい天才』です」と答え、手塚先生のお人柄や具体的なエピソードを紹介。父にはほとんど怒られたことがないとか、天才だが気難しい天才ではなく誰に対しても気を遣い誰とでも話をする天才だったとか、子どもたちからサインをねだられたら次の用事が迫っていても断らなかったとか、そんな数々の素敵なエピソードが披露されたのです。そのくだりで私はジーンとして涙をこぼしました。この講演会に誘ってくれた友人も涙ぐんでいました。
「手塚作品ではどれが一番お好きですか?」との質問には、「手塚の作品は家族みたいなもので、家族で一番好きなのは誰ですか?と訊かれている気持ちになるため、答えるのが難しい」とのご返答でした。
このたびの手塚眞さんの講演会は、浜松科学館で開催された「鉄腕アトム ロボットと暮らす未来展」の最終日に行われました。その日の翌日(4/1)から同館は大幅リニューアルで1年半ものあいだ休館になるため、同館にとってこの講演会は記念すべき大きな区切りの催しとなったのでした。歴代館長や副市長も講演会場にいらっしゃっていました。
以下、「鉄腕アトム ロボットと暮らす未来展」の簡単なレポです。
・『鉄腕アトム』とロボットに関するあれこれがパネルで解説。
・アトムやウランちゃんなど、さまざまなキャラクターのダイカットパネル。
・こんな感じで、アトムのいくつかのエピソードが複製原画で紹介されていました。
・講談社の手塚治虫漫画全集を中心に、手塚作品や関連本をたくさん読める図書コーナー。写真にはおさまっていませんが、書棚の左半分には生き物の図鑑や理科的な入門書が並んでいて、じつに科学館らしい図書ラインナップでした。
・現在発売途中の「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」の完成版ATOMが愛嬌をふりまいていました。
・アトム誕生の研究室は最大の撮影スポットです。目覚める前のアトムの表情がキュートでたまりません!
・アトムのクイズや講演会のアンケートに答えて、アトムの定規とシールをゲット!浜松科学館の特製非売品です!!