「手塚治虫のエロティカ」
7日(月)に発売された「新潮」12月号を購入しました。
漫画家デビュー70周年企画「手塚治虫のエロティカ」が掲載されているのです。
16ページにおよぶ巻頭グラビアで、開かずのロッカーから発掘された手塚先生の未発表デッサン画が初公開されています。2年ほど前に開かずの机およびロッカーから発掘された画稿は多数あるのですが、そのなかから本企画では「エロス」をテーマに掲載作を選定しています。
手塚先生が亡くなってすいぶん経過したのに、こうして新たに未発表の作品が発掘され公開されるのですから、やはり手塚ワールドは未開拓の領域がまだまだ残された冒険地のように広大です。それらの作品を初めて見る私は、手塚先生の新作に触れたような感動をおぼえます。
掲載された数々のデッサン画の多くが、人間の女性がその女体のフォルムを生かしながら他の生き物や物品に化けていく内容です。ネズミ、ヒゴイ、クモ、白馬、パンダのぬいぐるみ、団子、自動車などなど、いろいろなものに化けています。人間の女性が有するボディラインの艶っぽさに、化け物的な異形性や人外が放つ色気が入り混じった手塚流のエロスがみなぎっています。
しだいに化けゆく変容過程の描かれた画はとくに見ごたえがあって、手塚マンガの大きな特徴である“メタモルフォーゼ”をぞんぶんに味わえます。
そして、そういうエロスと変容を描いた画ばかりが集められたからこそ、手塚先生の丸みを帯びたなめらかな描線の官能的な魅力がクリアに伝わってくるのです。