今年2度目の手塚治虫記念館
大阪へ行く用事があったので、宝塚まで足をのばして手塚治虫記念館を訪れました。9日(日)のことです。
1月に雑誌「Pen」の取材で来ているので、今年2度目の手塚治虫記念館来訪となります。
同館では現在、マクロスの企画展を開催中です。
●第74回企画展「MACROSS:THE ART 1982-2018」
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/tezuka/4000020/4000196.html
企画展自体は「2階企画展示室」で行なわれていますが、館内のあちこちに手塚風タッチで描かれたマクロスシリーズのキャラクターたちがいました。
・フレイア・ヴィオン
マクロスシリーズに疎いので一人一人がどんなキャラクターかよくわかりませんが、とりあえず名前だけ調べてみました。
そして、『火の鳥』に登場するロビタがマクロスとのコラボデザインに!
「マクロビタ」というらしいです。
グッズ売場にこんなクリアファイルが売っていたので記念に購入しました。
無数のロビタたちが行進するあのシーンのなかにマクロビタがまじっています。
百鬼丸の腕型ペーパーナイフ
来年1月からスタートするTVアニメ『どろろ』の第1弾キービジュアルや第1弾PVアニメが発表されました。
https://dororo-anime.com/
過去のマンガ作品が映画化されたりTVアニメ化されたりすると、その映画やTVアニメ自体を見る楽しみが(不安も)あるほかに、それに付随してその作品のグッズが発売されたりイベントが開催されたりメディアでの露出が増えたりするのも嬉しいですし、原作マンガの再評価や新たな読者の開拓につながったりすればなお喜ばしい、と思います。
どんな名作であっても現在や未来に生きる人々から忘れ去られる可能性があるわけです。とくに、作者が亡くなったり引退した場合は、その作者自身の手で新たな作品が生み出されなくなり、時代の流れとともに忘れ去られていく…。たとえ忘れ去られるとまではいかなくても、読者の数やファンの熱量は時代を経れば減少していくでしょう。その意味で手塚マンガは比較的恵まれているほうだとは思いますが、それでも今の10代や20代の若者に手塚マンガを読んだことがあるか、どれだけ読んだか、と問えばかつてほど読まれていない実情がおそらく浮かび上がるでしょう。手塚FCの集まりに参加した知人によれば、集まるたびに「手塚ファンの高齢化問題」が話題にのぼってしまうそうです。
そんなわけで、「過去の作品を現在に生かし、未来に継承する」という意味でも、今回の『どろろ』TVアニメ化のように現役バリバリのクリエーターさんが過去の作品を題材に二次的な創作をして世に問う、というのは有効な手段だと思うのです。(もちろん、ほかにも昔の作品を残していく方法はいろいろとあるでしょう)
また、原作どうこうとは関係なく、その映画やTVアニメが作品単体としてすばらしいものになったとすれば、それもまた良いことだと思いますし。
映画化・TV化にともなってグッズが発売されるのも嬉しい、と先述しましたが、2007年に『どろろ』が実写映画化されたさい、私の中での最高の収穫がこの百鬼丸の腕をかたどったペーパーナイフです。
劇場で販売されたオリジナルグッズです。アイデア商品的な面白味があって気に入ってます♪
手塚治虫キャラクターグッズのコレクション展示を観覧
7月28日から9月24日まで岐阜県博物館にて「夢虫!熱虫!懐かしの漫画・アニメコレクション 〜過去から未来への贈り物〜」が開催中です。
・岐阜県関市にある岐阜県博物館。
展示内容は、犬山市在住の林真司さんが集めた手塚治虫キャラクターグッズ(主に虫プロ時代のもの)と、名古屋在住の小池信純さんが集めた鉄腕アトムグッズ。つまり、手塚先生が生み出したキャラクターたちのグッズがたくさん展示されているのです。
どちらを向いても大量の手塚キャラグッズが視野におさまる夢空間。貴重でキュートで胸が高鳴る展示でした♪
まずは林さんの手塚グッズコレクションのショーケースを写真で紹介します!
林さんのグッズ展示は量も質もすさまじく、目を見張るばかり。ひたすら壮観です。
林さんが集めたグッズ自体はもっといっぱいあります。博物館に搬入した分だけでも展示しきれず裏に置いてあるものもあって、今後展示替えをしていくそうです。
林さんのグッズ展示の中から『マグマ大使』のものを見つけて撮影し集合させてみました。NHKの朝ドラ『半分、青い。』に登場していっとき旬の話題になったことが記憶に新しいので、『マグマ大使』をセレクトしたのです。(『マグマ大使』グッズはほかにもありました)
次に小池さんのアトムグッズをご覧ください!
数々のアトムたちのかわいいこと、かっこいいこと!! 愛でて愛でて愛で続けたくなります。
およそ50年前の陶製アトム貯金箱×5点を鑑定してもらったときの証拠品。
林さんと小池さんのコレクションのほかに、渡辺淑人さんの手塚治虫作品映像コレクションも展示されていました。これも見逃せません!
LDジャケットの魅力をあらためて実感しました。
8月26日付の岐阜新聞にこのコレクション展の記事がカラーで掲載されました。
すばらしい展示をありがとうございました!
GOMAさんが描く火の鳥
静岡市民文化会館で今月19日までディジュリドゥ奏者で画家のGOMAさんの個展『〜再生〜』が開催されました。その個展を18日(土)に鑑賞してきました。
http://gomaweb.net/schedule/goma20tour180811-19/
なぜ18日を選んだのか。関連のギャラリーイベントが開催されたからです。
その内容がじつに盛りだくさんでして、
・GOMAさんのドキュメンタリー番組(ETV特集『Reborn〜再生を描く〜』)上映
・GOMAさん×手塚るみ子さんトークイベント
・GOMAさんミニライブ(ディジュリドゥ演奏)
という豪華3部構成だったのです。
こんな魅惑的なイベントが比較的遠くない静岡市で開催されるのならばこれは行かずにはおけない!とばかりに参加申込みをしました。当日に急遽立ち見整理券が配布されるほど人気のイベントだったので、早めに予約申込みして本当によかったです。
・静岡市民文化会館
GOMAさんはオーストラリア先住民族の楽器・ディジュリドゥの奏者として1998年から活躍してきましたが、2009年交通事故にあって脳を損傷し高次脳機能障害に…。事故で意識を失ってから2日後に目を覚まし、(それまで絵を描く生活とは縁遠かったのに)幼い娘さんの絵の具を目にすると突然筆を手に取って、憑かれたように点描画を描きはじめたのです。そして、絵を描かずにはいられない人になったのでした。
・個展で展示されていたGOMAさんの点描画。ほかに何点もありましたが、撮影OKなのはこの2点でした。
GOMAさんの描く点々の一つ一つを見て「まるで原子の配列のようだ」と評した人がいます。分子や粒子に喩えた人もいますし、私も「生物の細胞の集まりのようだ!」と感じました。一粒一粒が呼吸し代謝していて、その精妙な集積としてGOMAさんの絵が息づいている、といった印象を受けたのです。
個展の鑑賞後、時間をおいて午後5時ごろからギャラリーイベントが始まりました。まずはドキュメンタリー番組の上映です。
この番組のなかで、GOMAさんは「後天性サヴァン症候群」と診断されました。脳の損傷によって突然絵画の才能が目覚めた現象についてそう名づけられたのです。
事故にあってGOMAさんの生活は激変します。記憶の多くを失い、今も突然意識を喪失することがあり、ほかにも失ったもの・不安なことがいっぱいです。そんなふうになってしまった自分をまだちゃんと受け入れられない…というGOMAさん…。苦悩や葛藤に見舞われる日々…。
番組のなかでGOMAさんは、彼と同様に脳の損傷によって音楽や数学の才能に突然目覚めた人々と会って言葉を交わします。絵画、音楽、数学と目覚めた才能は違えど、後天性サヴァン症候群の人たちと対話することでGOMAさんの心情は良い方向へ動きだします。
そして、後天性サヴァン症候群の専門家から「新たに目覚めた絵画の才能は失われることはなく、むしろ今後も進歩してく可能性がある」と力強く言われ、そこでようやくGOMAさんの口から“安心”“ホッとした”という言葉が出るのでした。
GOMAさんの事故後の状況や画家としての活動を見てきた手塚るみ子さんは、火の鳥を描いてみませんか?とGOMAさんに持ちかけました。GOMAさんの作品と『火の鳥』に響き合うものを感じたのです。それを機にGOMAさんは、それまで描いてきた抽象的な点描画に加え、火の鳥の点描画に(手塚治虫の存在の大きさ、作品の深さに圧倒されながらも)取り組むことになったのです。
GOMAさんと手塚るみ子さんのトークイベントが今回開催されたのは、そういう関係性があるからです。
お二人のトークイベント、とてもいいお話が聴けました。
手塚先生の『火の鳥 復活編』の主人公・レオナは、交通事故で死亡しながらも科学的な再生手術で生き返ります。ところが脳にかかわる後遺症が出て、彼の目には人間が醜い無機物に見え、ロボットが美しい女性に見えるようになってしまいます。そんなレオナの境遇がGOMAさんと重なるところもあって、るみ子さんは、GOMAさんが火の鳥を描く行為は『GOMA復活編』だと述べられました。そして、るみ子さんはこう言います。
「GOMAさんがGOMAさんの火の鳥を描く行為は『火の鳥GOMA編』が続くことでもある。手塚はまだ終わっていない…。手塚が現世でやり残したことをいま現世にいるクリエーターさんに託したい」。
そんなお話がじつにじつに印象的でした。
GOMAさんは、いったん失った意識を取り戻そうとするとき“ひかり”を見るそうです。意識を失い回復しまた意識を失い…といった体験を繰り返すうちに、その“ひかり”の映像が脳に残存するようになりました。そんな“ひかり”の世界を、そうせざるをえない衝動に押されて点描画で表現しているのです。
手塚先生もまた『火の鳥』で何度も“ひかり”を描いています。意識の喪失と回復。生命の生と死。そんな境界線を行き来する者が見る“ひかり”を、手塚先生もGOMAさんも描いているのです。るみ子さんは両者の共通性をそこに見たようです。
GOMAさんが、絵を描かずにはいられない精神状態について説明するとき「絵を描かないと混線が起きる」と言い表わしたのも心に残りました。その「混線」が、絵を描くことで整理されシンプルになり安定する、ということです。
イベントのラストはGOMAさんのミニライブでした。ディジュリドゥの演奏は、これまで映画やテレビでしか聴いたことがなく、これが初めて生演奏を聴く体験となりました。荘重な音、どよめくような響きが、耳の鼓膜より先に腹の底に届くような不思議な感覚で、聴いているあいだじゅう心地よさと異世界感にひたれました。短いながらとても感動的なライブでした。
イベント終了後は、GOMAさん作の点描画『夕焼けの火の鳥』の特製スカーフを物販で購入し、GOMAさんからサインをいただきました!
そして、手塚るみ子さんと記念撮影!
この日のるみ子さんもオシャレで可愛らしかったです♪
GOMAさん、るみ子さん、関係者の皆様、同行してくれた友人たち、素晴らしい時間をありがとうございました!!!
『生誕80周年記念読本 完全解析!石ノ森章太郎』
きのう当ブログで石ノ森章太郎先生に関する本と番組の情報を記しましたが、その流れで、本日(8月22日)発売された『生誕80周年記念読本 完全解析!石ノ森章太郎』(宝島社)も紹介します。この本には私も文章を寄稿しているのです。石ノ森先生とスタジオゼロの関わりをきわめて簡潔に紹介した全2ページの文章です。(手塚先生との関係で言えば、スタジオゼロは虫プロダクションからアニメ『鉄腕アトム』「ミドロが沼の巻」の制作を依頼されています。その結果たいへんなことになるわけですが・笑)
本書には、石ノ森先生の盟友だった藤子不二雄A先生へのインタビューも掲載されています。藤子A先生が石ノ森先生とのエピソード、石ノ森先生への思いなどを語ってくださったインタビューです。私は、藤子A先生にどんな質問をするか…の案作りにも協力させていただきました。
石ノ森先生と親交のあった漫画家さん・作家さんへのインタビュー、石ノ森先生をリスペクトするクリエーターさんからの寄稿など、さまざまな人物のお話と文章が満載の一冊です。石森プロ全面協力のもとで作られており、石ノ森先生を知るための格好の入門書・解説書となっています。
http://amass.jp/107670/