手塚るみ子さん講演会「亡き父 手塚治虫を語る」

 
 
 11月23日(金・祝)、西濃母親大会の会場で手塚るみ子さんの講演「亡き父 手塚治虫を語る 〜平和な世界を子どもたちへ〜」が開催されました。
 
 
 
 この講演は、父親としての手塚先生のお姿を、るみ子さんの体験と視点から伝えてくれるものでした。
 手塚先生が、幼いるみ子さんたちをキューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』の公開初日や、できたばかりのフレンチシェフのお店などへ連れていってくれた、というお話がありました。それらの価値はまだ子どもには理解できないだろうけれど一流のものに触れさせたい、という手塚先生の考えがあったそうです。手塚先生は若い漫画家に対して、一流の映画を見て、一流の小説を読んで、一流の音楽を聴きなさい…とよくアドバイスされていたと聞きますが、お子様たちにも一流のものに触れさせるようにしていたのですね。
 手塚先生は子どもたちの可能性をはぐくむことを大切にしていた、というお話も印象深かったです。子どもを未来人ととらえていた手塚先生は、さまざまなことに好奇心を持ち、好きなことを見つけ、自分で考え選択し、失敗してもまたやり直せるような教育・社会環境が子どもたちに重要だと考えておられたのです。
 どちらかといえばお堅い感じの団体さんが主催のイベントでしたが、多忙な漫画家の家庭だからこそ起きえたユニークなエピソードが披露されたときなどは会場が笑いに包まれたりもしました。

 
 講演後、るみ子さんのサイン会が開かれました。
 
 
 るみ子さんがモデルになっている、と言われるピノコのクリアファイルにサインをいただきました!この日のるみ子さんと髪型がピノコそのまんまじゃないか!と思えるものでした♪ 比べてみてください。


 
 帰り際に、るみ子さんから西光亭のチョコくるみクッキーをいただきました。なんという可愛らしさ!! 


 この講演会の模様が中日新聞の岐阜版で記事になっています。
 http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20181124/CK2018112402000014.html


 講演会の前日、るみ子さんが名古屋に宿泊されたので夕食をご一緒させていただきました。味噌カツを食べたいというリクエストだったので、味噌カツがおいしいと評判のお店を選びました。
 
 写真のとおり、高須クリニックの高須力弥さんもお誘いしました。たまたまですが、力弥さんのお父様でいらっしゃる高須克弥院長に密着したテレビ番組が、この日の午後9時からフジテレビ系列で放送され、その番組に力弥さんも少しだけ映っておられました♪
 るみ子さんは味噌カツを気に入ってくださったようでよかったです。

「有鄰」に切通理作さんの手塚治虫論

 何年か前にエッセイを寄稿させていただいたご縁から、関東の書店である有隣堂さんの情報紙「有鄰」が毎号家に届きます。今号の一面は、切通理作さんの手塚治虫論です。
 
 前半では、現役作家としての手塚治虫に触れ続けた少年時代の切通さんの手塚体験が語られています。手塚先生の“現役感”という観点が興味深いです。
 後半では人間と人間以外の境界にまなざしを注ぐ手塚作品の性質について論じられています。

生誕90年の日にどう過ごしたか

 11月3日(土)は、手塚治虫先生のお誕生日でした。しかも、ご存命なら90歳を迎えられる大きな節目のお誕生日なのでした。
 手塚先生のお誕生日には毎年何かしら先生の作品に触れることにしています。今年は『フィルムは生きている』を読み返しました。
 

 『フィルムは生きている』は、手塚先生が「もう狂うほど動画作りに意欲をもやしていたころの、ぼくの私小説(私マンガ?)ともいうべきものです」と述べておられた作品です。その意味で、この本の帯にもあるように、手塚先生の半自伝的な成分を多分に含んだお話です。


 夢を抱いて田舎から上京、ほとばしる情熱とたゆまぬ努力、数々の苦難による挫折と克服、切磋琢磨し合うライバルの登場、慕ってくれる女の子との遭遇、理解者と妨害者の存在など、青春ストーリーの諸要素がぎゅっと詰まっています。
 主人公の武蔵は、マンガ映画の作り手を目指して田舎から上京した青年ですが、彼に降りかかる苦難がじつに過酷なのです。勤め始めた動画スタジオをクビになり、5万枚も描きためた絵を燃やされ、失明の危機に陥り、自殺をはかろうとまでします。そんな苦難を乗り越えてマンガ映画の道を情熱的に歩んでいくのです。


 『フィルムは生きている』を読んでいると、マンガ映画(アニメーション)への情熱があふれんばかりに伝わってきます。手塚先生が「私小説(私マンガ)」とおっしゃったとおり、武蔵のアニメーションへの情熱は、手塚先生ご自身のアニメーションへの情熱が思いっきり投影されています。「マンガが本妻でアニメが愛人」「まんが映画は、ぼくにとって命と家族のつぎにだいじなもの」とまで語っていた手塚先生ですが、『フィルムは生きている』執筆当時は(マンガの世界では第一人者だったものの)アニメの世界では新人みたいなもの(東映動画西遊記』のスタッフになったころ)でした。だからこそ、これからもっと本腰を入れてアニメに携わりたい、自前のアニメスタジオを持ちたい、という希求が強く、その思いが『フィルムは生きている』にストレートに託されたのでしょう。


 3日は、NHKラジオ第1で特番『まんがの日特集 生誕90年!未来に語り継ぐ 神様・手塚治虫』が放送され、生誕90年の記念日を盛り上げてくれました。3時間弱におよぶ生放送で、私は最初から最後まで生で聴きました。
 https://www.nhk.or.jp/radiosp/tezuka90/
 スタジオゲストとして、手塚研究の第一人者・竹内オサムさん、カラテカ矢部太郎さん、乃木坂46伊藤純奈さが出演。常時スタジオにいたその3名に加え、午後2時台には藤子不二雄Ⓐ先生、3時台にはカサハラテツロー先生も迎えて、さまざまに手塚トークが繰り広げられました。
 宝塚の手塚治虫記念館や吉祥寺で開催中のキチムシ会場からの生中継もありました。記念館では手塚ファンの知人がインタビューに答えていたし、キチムシ会場からは主催者の手塚るみ子さんが出演され、さらに、番組内で読まれた藤子Ⓐ先生への質問メッセージも知合いが送ったものだったりして、そういう点で番組に親近感を抱きました(笑)
 本当なら記念館やキチムシの現場で手塚先生のお誕生日をすごしたかったところですが、なかなかそこまで遠征できません。だからこそ、このラジオ特番は、遠征できない私の寂しさを埋めてくれてありがたかったのです。
 この特番では、リスナーによる「未来に残したい手塚作品」投票がリアルタイムで行われ、以下のような結果が出ました。


 1位:ブラック・ジャック
 2位:火の鳥
 3位:鉄腕アトム
 4位:七色いんこ
 5位:ジャングル大帝
 5位リボンの騎士
 7位:アドルフに告ぐ
 7位:W3
 9位:どろろ
 10位:三つ目がとおる


 こういうアンケートがあればよく上位に来る常連作品が並んだかっこうですが、『七色いんこ』が4位まで来るのはちょっと珍しいかもしれません。これはやはり、ゲストの乃木坂46伊藤純奈さんが舞台で七色いんこ役をつとめたことが影響しているのでしょう。伊藤さんが番組内で『七色いんこ』の話をしていたし、この番組を乃木坂46ファン・伊藤純奈ファンが多く聴いていたということも考えられます。
 私も投票に参加しました。手塚作品の中から1位を選ぶなんて至難のワザだよな、といつも思うのですが、そう思って何も決めないでいるとこういう企画に参加できないので、えいや!と気合を入れて強引に作品を選ぶことにしています。そのときによって選ぶ作品は少し変わってくるのですが、今回は『火の鳥』に投票しました。『火の鳥』を選ぶことがけっこう多いのですが。

ハロウィンの日に読む手塚マンガ

 今日(10月31日)はハロウィンですね。
 そこで“ハロウィン”という名の幽霊が登場する『ふしぎ旅行記』を読み返しました。昭和25年、描き下ろし単行本(家村文翫堂)のかたちで世に出た初期作品です。
 
 一般の日本人が海外旅行するなんて夢物語だった時代に、手塚先生は中国、インド、エジプト、イタリア、フランス、アメリカといった国々をめぐる世界旅行のお話を描いたのです。
 この作品の冒頭が印象的です。映画の撮影所内がどうなっているかを図解した見開きの大ゴマが描かれ、それからすぐ試写室の場面に移ります。これから始まる『ふしぎ旅行記』の物語は“試写室で観る映画”という体裁なのです。読者は、本を開いてマンガを読み始めたつもりが、試写室で映画を観ているような感覚へ誘い込まれるわけです。
 そうして物語の本編が始まったと思ったら、すぐに「ええっ!?」と驚かされます。初期手塚マンガで頻繁に主人公格として活躍する重要キャラクターのケン一があっさり死んでしまうのです。主人公がこんな簡単に死んでしまうとは!?
 それでどうなるかと思ったら、ケン一は幽霊(たましい)となってこの物語に出演し続けるのでした。
 天国の帳簿を確認してみると、ケン一はまだ死ぬ予定ではなく、なにかの間違いで死んでしまったのだと判明します。なので彼には生き返る権利があるわけですが、すでに肉体を紛失しているため、代わりの肉体を探して、幽霊の先輩と一緒に世界を旅することになります。
 その幽霊の先輩が“ハロウィン”なのです。
 ハロウィンは、幽霊化したケン一の相棒として常に傍らに寄り添い、ケン一の世界旅行をサポートする役を担っています。

雑誌「FLASH」に手塚治虫生誕90周年記念の記事が

 
 本日(10/30・火)発売された「FLASH」(光文社)に「人生で大切なことは「手塚治虫」から学んだ」!という記事が載っています。


 ・40〜50代の男性300人からアンケートを取った「いちばん好きな手塚マンガ」ベスト10
 ・女優・田中道子が選ぶ『ブラック・ジャック』マイ・ベスト・ストーリー7
 ・著名人2人(スピードワゴン小沢一敬、女装家ブルボンヌ)が語る「作品愛」


 といったページがあります。

文化功労者が『鉄腕アトム』からの影響を語る

 
 きのう(2018年10月27日・土)の中日新聞朝刊より。
 文化功労者に選ばれた京大教授・森和俊さん(細胞生物学)は、『鉄腕アトム』で科学に興味を持ったそうです。
 同じように『鉄腕アトム』の影響で科学の道へ進んだ人は少なくないでしょうけど、近年の出来事で印象深いのは、2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二さん、翌15年に同賞を受賞した梶田隆章さんが、それぞれにお茶の水博士への憧れを語っていたことです。
 中村修二さんは、小学校の卒業文集に「アトムを育てあげたお茶の水博士のような科学者になる」と書いていたとか。梶田隆章さんも子どものころ『鉄腕アトム』が好きで、母親に向かって「お茶の水博士になっていい?」と伝えたことがあるそうです。2年連続で日本からノーベル物理賞受賞者が出て、2年連続で受賞者からお茶の水博士への憧れが語られたことに、『鉄腕アトム』の日本の科学研究への貢献度の高さを感じ取ったのでした。