袈裟丸周造「林宏」

林宏 (ヤングジャンプコミックス)

林宏 (ヤングジャンプコミックス)


 本書は、「週刊ヤングジャンプ」2005年28号〜34号に集中連載された、袈裟丸周造のマンガ『林宏』を、ラストを大幅加筆して単行本化したもの。私は、この作品の存在も袈裟丸周造というマンガ家もまったく知らなかったが、書店で平積みになっているのを見かけジャケ買いしてしまった。


 林宏というコードネームの殺し屋が主人公のサスペンスマンガで、最後の最後までこの先どうなるんだ、という興味を持続させながら読むことができたが、本書のオビで「10年に1人の天才 読めばわかる」と宣伝されているほど、驚くような作品でもなかった。オビの宣伝文句は、往々にして大げさなものなんだけど。
 だからといって凡庸なサスペンスに堕しているわけではなく、「何が起きているの?」という魅惑的な不可解さや、主人公の殺しの標的になった人物の認知症を巡る謎、先の読めない意外な展開をクールに描いていく筆致など、作者の才気を感じさせる要素はいっぱいあった。

 
 
 袈裟丸周造。覚えておこう。