法月綸太郎「雪密室」
- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/03/03
- メディア: 文庫
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『密閉教室』は高校を舞台にした青春小説なので私の年齢に合わなかった、という見方もできるが、私は30代後半の今でも青春小説が好きで、素直に感動したりときめいたりできるクチである。たとえ作品の舞台が高校であろうと、登場人物の多くが10代の若者ばかりであろうと、それが理由で作品にのめりこめないということはない。やはり、文章の問題が大きいだろう。
本作は、その後の法月作品でも活躍する、作者と同名の探偵役・法月綸太郎と、その父親・法月警視が初めて登場した作品だ。作者と同名の探偵が登場するのは、作者が尊敬するエラリイ・クイーンの作法を踏襲したもの。探偵役の職業が推理小説家で、その父親が警視で、そんな親子が協力しながら事件の謎を解いていく設定もクイーンへの敬意から来ている。
山荘に招待された法月警視、その山荘で起こる密室での不可能殺人、そこに綸太郎も加わって、端正に謎が解き明かされていく。そのスタイルは、オーソドックスであり、古典的とさえいえる。「読者への挑戦」のページを挟んで謎解きに入っていく展開も、ロジックとトリックを重視する作者らしいやり方だ。